部下にどうしても直してほしいところがあります。人間関係にヒビを入れずに注意をし、改めてもらうにはどうすればいいでしょうか。
「あの人にこういうところを直してほしい」「あの人にこういう欠点があることをよく自覚してほしい」と思うことがあります。
ですが、私たちは、自分の欠点や間違っていることを認めたくないので、注意されてもはねつけたり、腹を立てたりしてしまいます。
自分よりも立場が上になる会社の上司や先輩から注意されると、とりあえず「申し訳ありません、分かりました」と謝っても、心の中では、
(こういう事情があったのに、全然分かってくれない。頭の固い上司だな)
と恨んだり、反発の心を起こしたりしてしまいます。
だから、他人に注意をするのは大変難しいことなのです。下手に注意すると、人間関係が悪くなるから、注意することを避けようとしがちです。
それでも、相手のことを考えると、「これだけは言っておかなければならない」「分かってもらわなければならない」という時は、どうすればいいのでしょうか。
こんな時、「与奪の法」(よだつのほう)ということが教えられています。
与奪の「与」とは、与えるということです。「与える」とは、相手の言い分を聞く、長所や頑張り、努力を褒める、認めるということです。
与奪の「奪」とは、奪うということです。「奪う」とは、相手の欠点や認めたくない間違いを諭す、ということです。
つまり、相手の言い分や事情をよく聞いて、その次に相手の間違いを諭しなさい、ということです。
大手企業で部長を務めるある男性から、「なるほど」と思う話を聞きました。
その部長がいる部署に配属された新入社員のS君は、やる気はあるのですが、時間にいいかげんで、出社時間や打ち合わせの時間にいつも遅刻して、周りから煙たがられていたそうです。
何度注意しても言い訳ばかりで、直す気配がありません。このままだと、S君は会社に居場所がなくなってしまうと心配した部長は、次のように諭したそうです。
「S君は、いつもニコニコして笑顔がいいね。とても元気で印象がいいよ。何か心掛けていることがあるのかな」
「僕は人と接するのが好きなので、会った人に喜んでもらおうと心掛けています」
部長も知らなかった意外な一面でした。
彼の心掛けを聞いてじゅうぶん褒めた後、
「君はとても好青年だね、そういう評判は私にも聞こえてきている。そういえば、ある人が『Sさんは時間にいいかげんなことが玉にキズなのよね。時間さえしっかり守ってくれたら、言うことなしなのに』と言ってたよ。たしかに、君は遅刻が多いね。何か事情があるのかい」
と言うと、S君はこう言いました。
「すみません。自分でも自覚があるのですが、目の前のことに夢中になって時間を忘れてしまうんです」
「夢中になれるのはいいことだ。だけど、時間に遅れるとみんなに迷惑をかける。何か対策はないのかな。こまめにアラームをかけて、今後は、10分前には待ち合わせの場所に行くようにしたらどうだろう」
部長の温かい対応に感動したS君は、その後、アドバイスを実践して、遅刻が激減したそうです。
私たちが、相手に何か言いにくいことを伝えたい時、相手の欠点を直してもらいたい時、いきなりそれを持ち出すと、相手は反射的に心を閉ざしてしまいます。
いきなり相手にぶつける前に、まず相手の事情をよく聞いて理解し、褒めて認めることから始めるのが大事なのです。
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