腹が立ってどうしても相手を許せないとき、どうすればいいですか。許したい気持ちはあるのですが……。

ちょっとしたことで、私たちは腹を立ててしまうことがあります。腹が立つと、相手の欠点や間違っているところを探し出して、相手を責めてしまいます。
いったん「相手が間違っている。自分が正しい」と思い込むと、
  「腹が立つのは相手が悪いからだ、自分は間違っていない」
  という理屈になり、ますます一方的に相手を責め続けてしまいます。
実は、私たちが腹を立てるのは、相手が間違っているからではないのです。
  お釈迦さまは、次のように教えられています。
「私たちが腹を立てるのは、相手が間違ったことをしたからではなくて、自分の欲求が満たされなかったり、さまたげられたりするからなのだよ」
このことに気がつくと、相手に対する一方的な責めモードが解除されて、怒りの心がやわらぐのです。

夫との関係に悩む奥さんの相談を受けた時のことです。
「うちの主人は、本当にダメな人なんです。要領が悪いから、帰ってくるのも遅いんです。そのくせ、家にいる時はほとんどしゃべらない。何してもらっても当たり前で、だらしない。一緒にいると、本当に腹が立ってしかたがありません」
夫の悪い部分や欠点を次から次へと挙げられます。そして、
  「だから自分が腹が立つのは当然だ」
  「私でなくても、あんな人と一緒にいたら誰でも腹が立つ」
  ということを繰り返し訴えてこられました。
  私はひととおり話を聞いたうえで、
  「よく耐えておられますね。ところで、あなたはご主人にどうなってほしいと思いますか」
  と尋ねてみました。すると、
  「もっと話を聞いてほしいし、食事でもちゃんと、おいしいとかおいしくないとか言ってほしい。何も言わないから、無視されているようで腹が立つんです」
  と言われました。
  「そうですね。ご主人にはいろいろ欠点があるようですが、欠点に対してというより、もっと会話が欲しいのにこたえてくれないところに腹が立つんですね」
  と言うと、
  「そうなんです。こんなに寂しい思いを我慢しているんです」
  「あなたが会話がなくて寂しいと思っていることを、ご主人はご存じですか」
  「いえ、鈍感なので気がついていないと思います」
  「だったら、その気持ちを正直に伝えてみたらどうでしょう」
  「たしかに、責めるばかりで、自分の気持ちをちゃんと伝えていませんでした」
  と、だんだん怒りが落ち着いてきたようでした。
奥さんが腹を立てていたのは、夫が自分の話を聞いてくれず、寂しかったからなのです。
  夫の欠点をたくさん挙げたのは、
  「間違っているのは夫。自分は正しい」
  と自分を正当化するためだったのです。
だから、夫の欠点をどれだけ責めても、怒りが治まらなかったのです。
私たちも相手を責めている時は、「自分は正しい、相手は間違い」といろいろな理屈で正当化しています。
  でも、どうして腹が立つのかを見つめると、相手が間違っているからではなく、自分の欲求が満たされなかったり、妨げられたりするからなのです。
このことに気づくと、「相手が悪い」と一方的に責める気持ちが和らいで、自分の
  「こうしてほしかった」
  「これが嫌だった」
  という素直な気持ちを伝え合おうとする前向きな努力につながるのではないでしょうか。
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