職場の上司がイヤミな人で、何か言われるたびに腹が立ちます。
誰でも自分の周りには、どうも苦手で気の合わない人が1人や2人はいるものです。
「あの人は苦手だな」
「なんか嫌な感じだ」
と思ってしまうと、一緒にいるのも嫌になったり、その人の何気ないしぐさも気になったりしてしまいます。
苦手な人とはなるべく関わらないようにするのも1つの手ですが、部署が一緒になる、直属の上司になるというように、避けようがないこともしばしば起こります。
お釈迦さまは、どんな人も避けることができない苦しみの1つに、「怨憎会苦」(おんぞうえく)を挙げられています。
怨憎会苦(おんぞうえく)とは、嫌いな人に出会う苦しみのことですが、お釈迦さまの時代も今も、生きている限り付きもののようです。
でも、どうせ逃げ切れない苦しみなら、この苦しみをきっかけに自分が成長しないと、もったいないですね。
実は、自分の心の一部が相手に映って、相手のことが嫌いだと思ってしまっている場合もけっこう多いのです。
「職場の上司が嫌味な人で、何か言われるたびに腹が立つんです」
と、メルマガ読者の方から、職場での人間関係の相談を受けた時のことです。
「どこが嫌に感じるのですか」
と聞いたところ、上司は何でも断言口調で、他人の間違いを容赦なく指摘して、自分の考えやアイデアが正しいことを主張するそうです。それがすごく傲慢で、図々しく感じる。
「なんであんなに無遠慮になれるんだろうか。それが嫌でたまらない」
ということでした。
それに対して、こう聞き返してみました。
「みんなに遠慮して何も言わないほうが、会社にとって不利益なこともあるのでは」
すると、たしかにその上司は仕事に積極的で、そういう面では周りから評価されているということでした。
そこで、もう少し突っ込んで、
「何かその上司の口ぶりが、嫌なことでも思い出させるんでしょうか」
と質問してよく話を聞いてみると、中学校の担任の先生が上司と似たタイプの人で、その先生からずいぶんひどいことを言われたことが、今でも忘れられないと打ち明けてくれました。
つまり、「上司 = 嫌い」ではなく、上司の口調が昔の嫌な記憶を思い出させて不快な思いを抱いていたのです。
その方は、嫌いなのは上司でなく、昔の嫌な思い出だったと分かり、自分を見つめ直すことができて、気持ちが楽になったと言われました。
「浦島太郎」という昔話に出てくる乙姫さまが、竜宮城で魚たちを集めて「さて皆さん、この玉の色は何でしょう」と聞きました。
カレイは「薄茶色!」サバは「青色!」クロダイは「黒!」と口々に答えます。
乙姫さまは笑いをこらえて言いました。
「皆さん! この玉は無色透明なんですよ。皆さんは、自分の姿がこの玉に映ったのを玉の色と思っただけ」
私たちの目も同じです。
自分の感情、思いを抜きにして、客観的に物事を見ることは絶対にできません。あなたが見ている世界は、あなたの心が映ったものなのです。
嫌いな人を避けられずに苦しんでいる時、ちょっと落ち着いて、どうしてその人を嫌いに思うのかを考えてみましょう。
「厳しかった父親に口調が似ている」
「えこひいきした担任の先生と、雰囲気が似ている」
「小学校時代のいじめっ子に似ている」
など、昔の自分のつらい思い出が相手に投影されているのかもしれません。
それが分かれば、その人自身が嫌いなのではなく、昔のつらい経験を思い出すのが嫌だったのだと、心が整理されるでしょう。
自分をより深く知るきっかけに「嫌いな人」がなってくれるかもしれません。
それでも、なかなか嫌いな人のことが気になって、落ち着かなかったり、つらい思いをしたりしてしまうことがあります。
そういう時は、なるべく相手のことを考えず、気にしないことです。
「それができれば苦労しないよ」
と思うでしょうが、考えてもみてください。
あなたが夜中、どんなにその人が憎たらしいと思って眠れなくても、当の本人はいびきをかいてグーグー寝ています。
好きな人のことを思ってわずらうならまだいいですが、嫌いな人のために、あれこれと自分の時間やエネルギーを奪われてしまうのは、これほどもったいないことはありません。
そんな時間があれば、自分のために費やしたほうがずっと価値があると思いませんか。
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